離婚して子どもの親権者となった場合、元のパートナーへ「養育費」を請求できます。
養育費の金額には法律の定める相場がありますが、金額も含めて基本的には離婚の際に夫婦が話し合いをして取り決める必要があります。
離婚後、子どもが成人するまできっちり養育費を払ってもらうためにはいくつかポイントがあります。
今回は離婚の際に知っておくべき「養育費の知識」を名古屋の弁護士がご紹介していきます。
このページの目次
1.養育費とは
養育費とは、子どもと同居していない親が子どもの扶養のために負担すべきお金です。
離婚すると、子どもの親権者(監護者)となって子どもを養育できる親は父母のどちらか一方で、もう片方は子どもと一緒に暮らせません。しかし別居していても親は子どもの養育について責任を負うべきなので、子どもが成人するまで養育費の負担をしなければならないのです。
養育費の支払い義務は「生活保持義務」という高いレベルの義務です。「自分の生活レベルを多少下げて」でも、子どもに自分と同等の生活をさせなければなりません。「余裕のあるときに払えば良い」という低い程度のものではありません。支払い義務者に借金があったり自分の生活費の負担が大きかったりしても養育費の支払い義務は低減されません。
2.養育費はいつからいつまで請求できる?
養育費を払ってもらえるのは、いつからいつまでなのでしょうか?
2-1.養育費の開始時期
養育費の支払い開始時期は、基本的に「離婚が成立したとき」からです。ただし離婚時に養育費を取り決めていない場合には、取り決めをしていなかった期間の過去の養育費は請求できなくなる可能性があります。
調停で養育費を決定する場合、通常は養育費調停を申し立てた月の分から養育費の支払いが認められるケースが多くなっています。養育費をもらっていないなら、早めに請求しましょう。
2-2.養育費の終了時期
養育費の支払いが終了するのは、基本的に「子どもが成人したとき」です。すなわち「子どもが20歳になる月まで」とするのが原則です。
ただし最近では大学や大学院、専門学校に通う子どもも増えているので、そういった学校を卒業するまでと定めるケースもよくあります。
反対に子どもが高卒で働き始めた場合には高校卒業時に養育費を打ち切りますし、子どもが未成年の状態で結婚した場合にも成人と同じ扱いになるので基本的に養育費の支払いは終了します。
3.養育費の支払い方法
養育費は、基本的に「毎月1回」支払うものです。「この先きちんと支払ってもらえるか不安が大きいので、離婚時に一括払いしてほしい」とおっしゃる方がいますが、基本的に養育費の一括払いは認められません。将来支払い義務者や権利者の収入が変動する可能性もありますし、子どもが死亡したり婚姻したりする可能性もあり、養育費の金額を先に決定するのは不可能だからです。
相手が支払ってくれるか不安でまとまったお金を受け取りたい場合には、財産分与などの他の名目で支払ってもらい、養育費はあくまで毎月の支払いを求めていきましょう。また毎月払いでもきちんと公正証書を作成するなど工夫をすれば、不払いの危険性をずいぶんと小さくできます。
4.養育費の金額の相場
養育費の取り決めをするとき「毎月いくらにするのか」が非常に重要な問題となるものです。養育費の金額については家庭裁判所の定める相場があり、現状ではそちらに従って計算されています。
具体的には支払い義務者と権利者の収入のバランスや子どもの年齢によって養育費の金額を定めます。支払い義務者の年収が高い場合、権利者の年収が低い場合、子どもの年齢が高い場合に養育費の金額は上がります。
つい最近までは家庭裁判所が2003年に定めた「養育費の算定表」が使用されていましたが、現代の経済事情と合致していないので改定されました。従来よりも細かく場合分けされており、金額的には以前より増額されています。
http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
これから養育費の話し合いをするなら、こちらの新しい養育費算定表を使って金額を決めると良いでしょう。
5.養育費の取り決め方
離婚後の養育費の金額や支払い方法について、基本的には離婚時に夫婦が話し合って決めるべきです。
合意ができたら必ず合意書を作成しましょう。財産分与などの他の離婚条件と共に「協議離婚合意書」に養育費の金額や支払い方法を書き込みます。
協議離婚合意書を作成したら、必ず公正証書にすべきです。公正証書にしておけば、将来相手が養育費を払わなくなったとき、すぐに相手の給料やその他の資産を差し押さえられるからです。
相手が公務員や会社員の場合、給与差し押さえをすると毎月の手取り額の2分の1まで(手取りが66万円を超える場合は33万円を超える全額)差押えができるので、非常に高い効果があります。ボーナスも差押えの対象になります。
話し合っても合意できない場合、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。
調停で養育費を含む離婚条件が決まったら、調停調書に養育費の支払い義務を定めてもらえます。その後相手が支払いを怠ると、調停調書を使った差し押さえも可能です。
離婚訴訟で離婚が決まる場合にも、養育費について定められます。判決なら裁判所に養育費の金額を決めてもらえますし、和解すれば自分たちで納得した養育費の金額を決定できます。
6.養育費の金額を変更する方法
いったん養育費の金額を決めても、離婚後に不相当となれば変更できます。
たとえば支払い義務者の年収が上がったり子どもの年齢が上がったりしたら増額請求できますし、支払い義務者の年収が下がったり再婚したりしたら義務者の方から減額請求できます。
養育費を増減額したいときには、基本的に当事者同士が話し合いをする必要があります。
自分たちで話し合っても決められないときには、家庭裁判所で「養育費増額調停」「養育費減額調停」を申し立てて、調停委員の関与の元であらたな養育費の金額を決定しましょう。
養育費は、子どもが安心して成長していくために大切なお金です。不安や疑問をお持ちの方がいらっしゃいましたら、お気軽に名古屋の弁護士までご相談下さい。