夫が個人投資家の場合、どのように離婚条件を取り決めていけば良いのか迷ってしまう女性の方が多数いらっしゃいます。
ひと言で「投資家」といっても、状況は千差万別です。うまくいっていてもうかっているケースもあれば、赤字続きとなっていて夫婦で苦しい生活を強いられている場合もあるでしょう。離婚の際には状況に応じた対応が必要です。
以下では投資家によくある離婚トラブルの内容や対処方法について、離婚問題に積極的に取り組んでいる名古屋の弁護士が解説して参ります。
このページの目次
1.投資家によくある離婚理由
1-1.赤字続きで家にお金を入れてくれない
夫が個人投資家の場合、投資がうまくいっていて家にたくさんお金が入っていれば、通常は妻もあまり不満を持たないものです。
しかし投資は常にうまくいくとは限りません。赤字続きでほとんど家にお金を入れてくれないケースもあるでしょう。妻が夫に「投資はやめて、どこかに働きに行ってほしい」と頼んでも聞いてくれず、家でパソコンとにらめっこをしたり不動産の情報を集めたりしているばかり、という状況もあります。家にお金が足りないので妻が働きに出て、その収入で何とか家族が暮らしているケースもあります。
このように、夫が働いているのかいないのか分からない状態が続くと、妻は不満を持って離婚を考え始めます。
1-2.投資に熱心すぎて家族の方をみてくれない
投資家の中には、あまりに投資に熱を入れすぎて、家族の方に見向きもしなくなる方がおられます。常に頭の中が投資のことでいっぱいで、一日中パソコンに向かっていたり、外に出るときには不動産会社との打ち合わせをしたりといった状態で、ほとんど家族と会話をしないケースも少なくありません。
夫があまりに投資に熱心で家族を顧みないと、どれだけ高収入でも妻は離婚を考え始めるものです。
2.投資家との財産分与
投資家と離婚するときには、財産分与の際に注意が必要です。
2-1.基本的には夫婦が2分の1ずつに分ける
夫が投資家であっても、財産分与の方法は基本的に通常のケースと同様で、夫婦共有財産を2分の1ずつに分配します。
共有財産となるのは、以下のような資産です。
- 現金・預貯金
- 不動産
- 株式
- 投資信託
- 各種の積立
- 保険
- 車
- 絵画や骨董品、時計や宝飾品などの動産
2-2.多種多様な財産が存在する可能性がある
相手が個人投資家の場合、投資対象として多種多様な株式や投資信託、積立をしている可能性が高く、不動産投資家なら全国に多数の物件を所有しているでしょう。
そうしたものを見落としなくすべて調べ上げて、価値を算定しなければなりません。
2-3.残ローンの財産分与
不動産投資家の場合、物件を購入するために多額の不動産ローンを利用しているものです。投資用のローンは一般の住宅ローンより高額であり、1件1億円以上になるケースも少なくありません。離婚時に不動産ローンが残っていたら、ローンも財産分与の対象になるのでしょうか?
法的な考え方によると、離婚時の残ローンは対象物件の価値から差し引いて計算します。
差引の結果、プラスであればプラス部分が財産分与の対象になりますが、マイナスになった場合、マイナス部分は財産分与の対象になりません。
たとえば1億3千万の物件を購入するために1億円のローンを組んだとします.その場合、物件価値は1億3千万円-1億円=3,000万円となり、3,000万円が財産分与対象です。
残ローンが1億4千万円の場合、物件価値はマイナスとなるので財産分与対象になりません。
2-4.負債の財産分与
夫が投資家の場合、投資のために借入をしているケースも多々あります。こうした事業のための借入も夫婦の財産分与の対象になるのでしょうか?
事業借入は、基本的に財産分与の対象になりません。夫婦の生活のために借り入れたものであれば妻が負担すべきケースもありますが、事業借入や夫の個人的な目的での借入は分与対象から外れます。また夫の債権者は、事業家としての夫を信用して貸付をしているのであり、「離婚したから債務者を妻に変えてほしい」と言っても同意しないでしょう。
夫名義で高額なローンや事業借入があっても離婚後に妻が負担する必要は基本的にありません。
2-5.法人化している場合
夫の投資事業を「法人化」しているケースもあります。
法人化していれば、マンションや株式などの投資対象は法人名義にしているでしょう。その場合、法人名義の財産は夫婦の財産分与の対象にはなりません。法律上、法人と個人には異なる「人格」が認められており、個人が離婚しても法人に影響しないからです。
ただし法人とは言っても夫の一人会社であり、実際には個人事業と変わらない状態であれば、法人格を否定して法人名義の財産も夫婦の財産分与の対象にできる可能性があります。
法人名義の財産を分与対象にできるかどうかはケースバイケースの判断となりますので、迷われたら弁護士までご相談下さい。
3.養育費について
夫が個人投資家の場合、子供の養育費をきちんと支払ってもらえるか心配される方も多数おられます。
確かに収入が不安定な職業なので、支払いを止められるリスクは会社員のケースより高いと言えるでしょう。ただ、収入がある以上は養育費の支払い義務があります。相手の直近の確定申告書の内容を元にして相当な養育費の金額を計算し、支払いの取り決めをしましょう。
ただし養育費の金額は、支払う側と支払いを受ける側の収入状況に応じて変更することが可能です。離婚後相手が赤字続きの投資を辞めて就職した場合や、収入が大きく上がったケースなどでは養育費の増額を求めることができるので、相手の様子を観察しておくと良いでしょう。
話し合っても増額に応じてもらえない場合、家庭裁判所で養育費増額調停をすれば、適切な金額に決め直すことができます。
当事務所では、さまざまな専門職の方の離婚案件を数多く解決してきた実績があります。投資家との離婚に迷われたときには、お気軽にご相談下さい。