貞操権侵害で慰謝料請求するための証拠

相手が独身と信じて交際したのに実は既婚者だった、既婚者から騙された

そんなときには相手に慰謝料請求できます。相手があなたを騙した行為は「貞操権侵害」になるからです。

ただし慰謝料請求するには「証拠」が必要です。今回は貞操権侵害で慰謝料請求するための証拠としてどのようなものが必要か、名古屋の弁護士が解説していきます。

このページの目次

1．貞操権侵害で証拠が必要な理由

1-1．貞操権侵害とは

人には「貞操権」が認められます。貞操権とは、性関係をもつかどうかを自由に決定する自由です。

既婚者が未婚者に対し「私は独身です」と告げ「結婚しましょう」と言って男女交際や性行為を誘ったとき、未婚者がそれを信じて性行為に応じてしまったら、未婚者は「本当は結婚できないのに騙されて性行為に応じてしまった」状況になります。

そこで未婚者の性行為についての自由な意思決定が妨害されたことになり、貞操権侵害が成立します。

貞操権侵害を受けると騙された未婚者は騙した既婚者へ慰謝料請求できます。

このとき、証拠がなかったら以下のようなリスクが発生します。

1-2．相手が「未婚とは言っていない」と主張する

貞操権侵害を受けて相手に慰謝料請求をしたとき、相手が「未婚と説明したことはない」などと主張するケースがあります。相手が未婚であることが前提でないなら貞操権侵害は成立しないので、相手の主張を覆す証拠がない限り相手は慰謝料支払いに応じないでしょう。

1-3．「結婚の話をしたことがない」と言われる

相手から「これまで君と結婚の話はしていない」と言われる可能性もあります。貞操権侵害は「結婚をちらつかせて性交渉を誘った」場合に成立するので、その主張が通ったら慰謝料請求は認められなくなります。

1-4．「肉体関係をもっていない」と主張される

相手から「交際したけれど肉体関係をもっていない」と主張されるケースも考えられます。性関係がなかったら貞操権侵害にならないので、慰謝料請求できません。

上記のような反論を封じるため、慰謝料請求前に貞操権侵害の証拠を揃える必要があります。

2．貞操権侵害で集めるべき証拠

貞操権侵害で慰謝料請求するなら、以下の3種類の証拠を集めましょう。

2-1．相手から「未婚」と告げられた証拠

相手から「未婚」と告げられた証拠や相手が未婚であることを前提としていた証拠です。以下のようなものが有効です。

相手から「独身」「未婚」と告げられているLINEやメールのやり取り、音声の録音

相手から「私は独身です」「彼女がいない」「家族がほしい」「結婚願望があります」などのメッセージが来ていたら、証拠にできます。音声レコーダーやスマホの録音機能で記録してもかまいません。

婚活アプリで知り合った経緯が分かるスマホ、PCの画面など

婚活アプリで知り合ったということは、お互いに結婚を前提にしていたということなので証拠になります。

結婚相談所で知り合ったことがわかる資料

結婚相談所には「結婚を希望する未婚者」しか登録していない前提なので、結婚相談所から開示を受けた相手に関する資料などは証拠になります。

婚活パーティで知り合ったことがわかる資料

婚活パーティも「結婚を希望する未婚者」しか登録していない前提です。婚活パーティに参加したときの資料などがあれば「相手が未婚」であることを前提にしていた証拠になります。

2-2．相手から「結婚しよう」と告げられた証拠

相手から届いた結婚をにおわせる内容のLINEメッセージやメールのやり取り、音声の録音

相手から「結婚しよう」「子どもが〇人ほしいね」「マイホームを持ちたい」「結婚したら家族で〇〇に住みたい」などメッセージが来ていたら証拠にできます。音声録音も同じです。「新婚旅行、楽しみだね」「婚姻届は〇〇頃に提出しよう」などお互いに結婚を前提にしていることがわかる会話内容も証拠になります。

結婚式の下見や予約をしていたことがわかる資料

結婚式の下見に行ったときにもらった式場案内やパンフレット、式場の人から届いた案内メールなどが証拠になります。

新婚旅行の調査や予約をしていたことがわかる資料

新婚旅行先の候補地を探すために調査をしていた場合、旅行に関する資料やパンフレット、旅行会社からのメールなどが証拠になります。

友人や両親の証言

友人や両親に紹介されていた（していた）場合、それらの人の証言が証拠になります。

顔合わせの際のレストランの領収証、写真など

両親と顔合わせをした場合などには、利用したレストランの領収証や撮影した写真などが証拠になります。

2-3．肉体関係をもった証拠

相手と肉体関係をもったことがわかるLINEやメールのやり取り、音声の録音

性関係をもった後にお互いに送り合ったメールやLINEなど、肉体関係がわかるやり取りや会話の録音記録が証拠になります。

ホテルや旅行に行ったときの領収証、予約票など

ホテルに宿泊したり利用したりしたときの領収証、旅行の予約票や行き先での領収証、クレジットカードの利用明細書などが肉体関係の証拠になります。

妊娠した場合には診断書やエコー検査の記録、医療費明細書など

相手の子どもを妊娠した場合には、産婦人科での医療費明細書、エコー検査の記録が証拠になりますし、医師に診断書を書いてもらうことも可能です。

3．LINEメッセージやメールを証拠化する方法

貞操権侵害の証拠としてLINEやメールのやり取りは非常に重要です。こうしたメッセージから「相手が悪質だったこと」や「交際解消後に相手が不誠実だったこと」なども証明できれば、単に慰謝料請求できるだけではなく、高額な慰謝料が認められる可能性が高まります。

LINEやメールを証拠化するときには、なるべくスマホやPCの画面をそのまま撮影するかスクショを保存しましょう。転送すると形式が変わってしまい「そんなやり取りをしていない」「編集した可能性が高い」などと反論される可能性があるのでお勧めではありません。

具体的な証拠の集め方はケースによっても異なります。弁護士が最適な証拠集め方法や請求方法についてアドバイスをいたしますので、迷われたときにはお気軽にご相談下さい。