最近では「モラルハラスメント(モラハラ)」という言葉もずいぶんと定着してきた印象がありますが、実際に夫婦間で「モラハラ行為」が行われているケースは多数あります。
モラハラとは、相手の人格を認めず否定し続けたり自分の意見や希望を一方的に押しつけたり理不尽な要求をして強制的に従わせたりすることです。
配偶者に対するモラハラは、ときに離婚原因になります。
この記事では、モラルハラスメント(モラハラ)を受けている場合の離婚の進め方について、解説していきます。
このページの目次
1.モラハラとは
モラハラは、簡単に言うと相手に対する人格否定行為です。相手を貶める言動を続けたり理不尽な要求を繰り返してストレスをかけたり自分の希望に強制的に従わせたりします。
たとえば夫が妻に対し、「お前は人間として劣っている」「俺がいないと何もできない」「誰もお前の相手などしない」などと言い続けたり、1日のスケジュールを作成してその通りに行動するよう強要したり、妻が実家に帰ったり友人に会ったりするのを制限したりする事例がよくあります。
モラハラ被害を受け続けていると、被害者は「自分は本当に価値のない人間」と思い込んでしまいがちです。また少しでも反対するとその3倍、5倍の反撃が返ってくるので、相手の理不尽な要求に黙って従い続けるしかなく、大変なストレスがかかります。
一般的にモラハラというと「夫が妻に行うもの」のイメージがありますが、現実には妻から夫へとモラハラ行為が行われるケースもあります。
モラハラ行為が行われると健全な夫婦関係の維持が困難となり、離婚に至る夫婦も少なくありません。
2.モラハラ配偶者の典型的な言動
- 配偶者や配偶者の実家の親族を侮辱する、貶める
- 相手を馬鹿にしたような目つきで見る、冷笑する
- 常に相手を否定する
- 平気で嘘をつく
- 無視し続ける
- 自分の間違いは決して認めない
- 配偶者を異常に束縛する
もしもあなたが「モラハラ被害」を受けている心当たりがあるなら、上記に該当するものがないか、よく考えてみてください。
3.モラハラの問題点
モラハラの場合、身体的暴力を伴わないケースが多いので周囲はなかなか気づきません。モラハラ加害者には世間体が良い方も多く、親族や友人、会社の同僚などからは「良い人」「よくできた旦那」などと評価されていることも多々あります。
身体に傷が残らないので「証拠」も残りにくく、後に離婚や慰謝料を請求する際に立証が難しくなりがちです。
またモラハラ被害者自身が被害を受けていることを自覚しにくい問題もあります。自覚がないので、延々と相手の理不尽な要求に従い続けてしまいます。
4.モラハラは離婚原因になる!慰謝料と金額の相場は?
夫や妻からモラハラ行為を受け続けているなら相手に離婚を請求できます。
モラハラは相手の人格を否定する行為であり、婚姻関係の維持を困難にさせるものだからです。程度の酷いモラハラは「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」と評価され、裁判で離婚を認めてもらえる可能性が高くなります(民法770条1項5号)。
またモラハラ被害を受け続けていた場合、相手に慰謝料を請求できます。モラハラ行為は相手に強い精神的苦痛を与える不法行為であり、それによって夫婦の婚姻関係が破綻してしまったからです。モラハラ加害者は有責配偶者(婚姻関係を破綻させた配偶者)」となり、慰謝料支払い義務を負います。
協議でも調停でも裁判離婚のケースでも、モラハラ被害者は加害者へ慰謝料請求できます。
モラハラのケースにおける離婚慰謝料の相場は、だいたい50~200万円程度です。婚姻年数やモラハラが行われていた年数、モラハラ行為の内容や程度などによって金額が変わってきます。
5.モラハラ夫(妻)と離婚を進める手順
モラハラ被害を受けている場合に離婚を進めるには、どのようにすればよいのでしょうか?手順をみていきましょう。
5-1.証拠を集める
まず、相手と離婚話を始める前に「モラハラの証拠」を集めましょう。証拠がないと、相手は離婚に応じないでしょうし、訴訟をしても離婚が認められない可能性が高くなるからです。
モラハラの証拠としては、以下のようなものがあります。
- 日記帳
- 録音や録画のデータ
- 相手から届いたメールやこちらが返信したメール
- 友人や親などに相談をしたときのメールや手紙
- 相手が渡してきたスケジュール管理表、家計管理表その他の書類
- メモや手紙
自分で書いた日記帳も証拠になるので、できるだけ詳しく書き残しておきましょう。
5-2.相手と話し合う
証拠が揃ったら、相手と話し合いをします。離婚することや離婚条件に合意できたら、「協議離婚合意書」と「離婚届」を作成して、役所に届を提出しましょう。
5-3.離婚調停を申し立てる
モラハラ夫が相手の場合、「絶対離婚しない」「離婚はするけど子どもは渡さない」などと言われて協議離婚が難しくなるケースが多数です。その場合には、家庭裁判所で離婚調停を申し立てて話し合いを進めましょう。調停では家庭裁判所の調停委員が間に入ってくれるので、相手と顔を合わせる必要もなく、精神的に楽に離婚話を進められます。
5-4.離婚訴訟を起こす
調停でも合意できなかったときには、離婚訴訟を起こして解決を目指します。離婚訴訟では、モラハラ行為を立証すると、判決によって離婚と慰謝料を認めてもらうことができます。
相手の同意は不要です。
そのためにも、準備時効としての証拠集めが重要となります。
モラハラ被害を受けている方は、自信をなくして「私は一人では生きていけない」「離婚なんてできるはずがない」と思い込んでいるケースが多々あります。そんなとき、弁護士にご相談いただくことで解決の糸口が見つかる例も少なくありません。
当事務所の弁護士は、常日頃から名古屋で離婚に悩む皆様に寄り添いながら、問題解決を目指しています。是非とも一度、ご相談下さい。