会社経営者の方が離婚する場合には、通常のサラリーマンの方の離婚とは異なる配慮が必要です。そもそも報酬が高いので財産分与対象となる資産も高額になっているケースが多数ですし、財産内容が複雑な場合もあります。
妻が会社株式を一部取得している場合もありますし、妻を会社で雇用している場合には、離婚にともなって退職トラブルが発生する例もあります。
今回は、経営者が離婚するときに必要な知識を中心に、名古屋の弁護士が解説していきます。
このページの目次
1.経営者の財産分与で気を付けるべきこと
経営者が離婚するときには、財産分与に注意が必要です。
1-1.2分の1ルールが修正される可能性
財産分与は、婚姻中に形成した夫婦共有財産を分け合う手続きです。一般的なサラリーマンなどの離婚のケースでは、夫婦それぞれにおける財産形成への貢献度が変わらないので、財産分与割合は2分の1ずつとなります。
ところが会社経営者の場合、通常人と比べて非常に高額な収入を得ているケースが多数です。その収入は、経営者本人の事業に関する手腕や力量に依存するところが大きいので、妻による貢献度は小さいと考えられます。そこで夫が事業家で通常人と比して極端に高収入を得ている場合などでは、財産分与割合が修正される可能性が高いと考えましょう。
裁判例でも、経営者である夫の収入が高額で婚姻中に約220億円の収入を得たケースにおいて、妻への財産分与割合を約5%程度とし、10億円しか財産分与を認めなかった事例があります(東京地裁平成15年9月26日)。
1-2.会社経営者でも2分の1ずつになる事例がある
上記のような説明をすると「会社経営者の場合には妻に2分の1の財産分与をする必要がない」と思う方がおられます。しかし、会社経営者であっても必ず妻に2分の1の取得分が認められないわけではありません。
夫が極端に高収入な場合にはルールが修正されますが、経営者であってもさほど収入が多くない方は多数おられます。また夫婦が共同して会社を経営している場合などもあるでしょう。そういった事案では、原則通り夫婦の財産分与取得割合は互いに2分の1ずつとなります。
1-3.法人の財産と個人の財産
会社経営者の財産分与では「法人名義の財産も分与の対象になるか」が問題となるケースが多数あります。
基本的に個人と法人は別人格であり、離婚するのは個人としての経営者なので、法人名義の財産は財産分与の対象になりません。夫婦で会社名義の家に住んだり車に乗ったりしていても、そういったものはすべて会社に帰属するので、妻が半分もらうことはできません。
ただし例外的に会社名義の資産が財産分与対象になる例があります。それは、経営者が一人で運営している一人会社などのケースで、個人と法人を同一視できるような場合です。この場合、状況としては個人事業と変わらず、個人財産と法人財産を切り分ける意味がないので、法人名義でも一部財産分与対象となる可能性があります。
1-4.株式の財産分与
経営者の離婚では、株式の財産分与が重大な問題になりやすいので注意が必要です。
特に非上場の株式会社で妻が会社株式を一部取得している場合などです。この場合、離婚後も妻が会社株式を持ち続けていると、いつまでも会社に対して権利行使できる状態となり、会社にとって不都合でしょう。妻にしてみても、流通性がない非上場会社の株式をいつまでも持っていても、あまりメリットはありません。
そこで夫あるいは会社が妻名義の株式を全部買い取るのが通例です。ただしその際、「株式の評価」が問題となります。非上場会社の株式評価方法にはいくつかの種類があるので、専門家に相談しながら適正な金額を算定する必要があります。
また会社株式の評価額非常に高額になる例もあり、会社の財務状況へ悪影響を及ぼす可能性があるので、慎重な対応が必要です。
2.妻を雇用している場合の問題点
会社経営者は、妻を従業員として雇用していたり、役員として名前を入れていたりする方も多数おられます。
「離婚したら妻は会社と関係がなくなるのですぐにでも辞めてほしい、役員から外れてほしい」と考える方も多いのですが、離婚は解雇や役員退任の理由になりません。
離婚したからといって一方的に解雇すると、妻から「解雇無効」として訴えられる可能性もあるので注意が必要です。
妻が役員の場合には任期が終了した時点で再任せず、会社から去ってもらう方法があります。一方正社員として雇用している場合には、客観的合理的な解雇理由と社会的に相当な解雇方法を要求されるので、簡単に辞めさせることは不可能です。
離婚と同時に妻に会社から去ってもらうには、きちんと妻と話し合いをして、一定の補償を行い納得してもらう必要があるでしょう。
3.複雑化しやすい会社経営者の離婚は弁護士にお任せ下さい
会社経営者が離婚するときには、通常のサラリーマンとは異なる問題が多数発生するので、離婚協議が長期化する可能性が高いと言えます。話し合いでは解決できず、調停・訴訟へと進んでしまうケースも少なくありません。
妻にとってはきちんと財産分与をもらわないと離婚後の生活に関わりますし、夫にとってはあまり高額な財産分与を行うことにより会社の財務状況や離婚後の生活に支障を来してしまうおそれがあります。
どちらの立場であっても、法律の専門家による的確な助言やサポートが必要です。当事務所には、財産分与の計算に非常に長けた弁護士が所属しており、経営者特有の問題点なども正確に理解しております。あらゆる場面で適切に対応し、依頼者の不利益を回避しながら可能な限りスピーディに問題を解決いたしますので、名古屋で経営者の離婚トラブルが発生してお困りの場合、お気軽に当事務所までご相談下さい。