公認会計士や税理士が離婚する場合には、一般の会社員や自営業者のケースとは異なる配慮が必要となるケースが多々あります。
以下では公認会計士や税理士が離婚する際の注意点や押さえておくべき知識をご紹介していきます。
このページの目次
1.離婚時に問題になりやすい財産分与
公認会計士や税理士と離婚する場合、財産分与についてトラブルが発生する可能性が比較的高いといえます。
こうした職業の方は一般の会社員などの方より平均年収が高く、夫婦共有財産の額も高額いなりやすいからです。
また監査法人や税理士法人、会計事務所、税理士事務所を経営されている場合などには、財産の内容が複雑になるケースもみられます。
以下では公認会計士や税理士との離婚で特に問題になりやすいポイントと対処方法を説明します。
1-1.監査法人、税理士法人を経営しているケース
財産分与の対象資産について
夫が公認会計士として監査法人を経営している場合、あるいは税理士として税理士法人を
経営している場合、監査法人や税理士法人名義の財産と夫個人の名義の財産の区別に注意が必要です。基本的に個人と法人は別人格なので、監査法人や税理士法人名義の財産は夫婦の財産分与対象になりません。婚姻中には家族で法人名義の車を利用しているケースなどもありますが、その場合車についての財産分与を求めることはできず、離婚の際には法人へ返還する必要があります。
ただし、夫が監査法人や税理士法人に「出資」や「貸付」を行っているケースがあります。その場合「出資金」や「貸付金」は夫個人の財産として財産分与の対象になります。特に出資金が財産分与に含まれる場合、高額になる可能性もありますし、評価方法が複雑で問題になるケースが多いので、専門家に相談をする必要があるでしょう。
財産分与割合について
夫が経営している監査法人や税理士法人が大きく成功を収めており、夫自身の収入も非常に高額になっている例があります。そのように夫の特殊な資格やスキルによって特別な高収入を得ている場合には、妻が取得できる財産分与割合を減らされる可能性があります。通常の離婚のケースにおける夫婦の財産分与割合は2分の1ずつですが、夫が極端に高収入な場合には妻の取得割合が3割や2割、あるいはそれ以下にされるケースもあります。
1-2.勤務しているケース
公認会計士であっても監査法人や一般企業に勤務している方が多数いますし、税理士でもどこかの税理士事務所に勤務しているケースがあります。このように、勤務会計士や勤務税理士の場合には、財産分与に対する特別の配慮はあまり必要ありません。
まず夫が勤務会計士(税理士)なら、家に「法人名義」の財産はありません。一般の会社員のケースと同様に個人財産しかないので、通常通り預貯金や保険、自宅や車などをすべて財産分与の対象とすることができます。
また勤務されている方の場合、そう極端に収入が高いケースは少ないものです。割合の修正はせず、通常通り2分の1ずつに財産分与すれば良いでしょう。
ただし勤務会計士や税理士の方は、不動産投資や株式投資を行っていたりゴルフ会員権を持っていたり、さまざまな保険に入って将来に備えていたりするケースも多いので、そういった財産を見逃さずにきちんと財産分与対象に含める必要があります。
2.退職金や年金について
相手が公認会計士や税理士の場合、退職金や年金についても注意が必要です。
個人で税理士事務所を経営している場合などには、通常退職金も年金もありません(年金については国民年金となります)。この場合、離婚するとしても退職金の財産分与を求めたり年金分割を請求したりすることはできません。
一方、配偶者が監査法人や企業に勤めている場合、税理士法人に勤めている場合などには、勤務先で退職金制度や厚生年金の制度が用意されているものです。
その場合には、退職金の財産分与や厚生年金の年金分割を求められる可能性があります。
さらに配偶者が監査法人や税理士法人、会計事務所や税理士事務所を経営している場合でも、自主的に「退職金代わりの生命保険」に加入している例が多数あります。この場合、生命保険が財産分与の対象になるので、分与を求めることが可能です。法人経営者の場合には代表者も厚生年金に加入するので、年金分割請求もできます。
このように、夫が会計士や税理士の場合、退職金や年金の取扱いがケースバイケースとなり、素人の方には適切な判断がつかないケースも多々あります。不利にならないために、お早めに弁護士にご相談下さい。
3.養育費について
公認会計士や税理士と離婚する場合、子どもに関する問題が発生するケースもあります。妻が親権を取得するとしても、いくらの養育費を支払ってもらうのか、決める必要があります。
養育費については、請求側と支払う側の収入のバランスによって相場の金額が定められているので、基本的にはそれに従って金額を決めます。
ただし離婚後に夫の年収が増額されたらその分養育費の増額請求ができますし、子どもの年齢が上がって15歳以上になったときにも増額請求可能です。
公認会計士や税理士の場合、離婚後に独立したり法人化したりして一気に収入が増えるケースも少なくありません。離婚後も常に相手の収入状況を観察しておき、相手の就業状態が変わったときには養育費の変更を求めると良いでしょう。
なお養育費については支払義務者からの減額請求も可能です。相手の収入が急激に落ちたり会計士や税理士を辞めたりしたときには、相手から養育費の減額請求を受ける可能性があります。また相手が再婚した場合や再婚相手との間に子どもができた場合にも、養育費が減額される可能性があります。
当事務所では、専門家を相手にした特殊な離婚の案件にも積極的に取り組んで参りました。知識やノウハウを蓄積しておりますので、お気軽にご相談下さい。