夫や妻に不倫されたら、くやしいので相手に慰謝料請求したいと考えますよね?
しかし不倫相手に慰謝料請求をしても、相手から「求償」されたら慰謝料を取り返される可能性があり、要注意です。
不倫相手に慰謝料請求をするときには、必ず「求償」についての知識を持ち、対策しておきましょう。
今回は慰謝料請求の際に考えなければならない「求償」について、名古屋の弁護士が解説します。
このページの目次
1.求償とは何か
そもそも「求償」とは何なのでしょうか?一般的にはあまり知られていないので、まずは基本事項として確認しましょう。
求償は、連帯債務や連帯保証している人が自分の負担部分を超えて支払ったとき、支払いすぎた分を他の連帯債務者や主債務者へ返還請求できる権利です。
連帯債務の場合、すべての債務者が負債全額についての支払い義務を負うので、債権者に対しては「負担部分」を主張できません。
しかし自分たちの間(債務者間)には負担部分があります。そこで、債権者からの求めに応じて負担部分を超えた支払いをした場合、他の連帯債務者へ支払いすぎた分の返還を求めることができるのです。それが「求償」です。
不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手の「連帯債務」となります。そこで不倫相手に慰謝料を請求して全額の支払いを受けた場合、後に不倫相手からあなたの配偶者に求償される可能性があります。求償されたらあなたの配偶者は不倫相手に慰謝料を一部返さないといけないので、せっかく苦労して慰謝料を回収した意味が半減するリスクが発生します。
2.求償権を行使されるとどうなる?
求償権について対策せずに不倫相手に慰謝料請求をすると、後に不倫相手からあなたの配偶者に求償権を請求される可能性が高くなります。
求償を受けたらあなたの配偶者と不倫相手との間で話し合いをしていくらを返金するか決定し、最終的には配偶者の負担部分を返金しなければなりません。
話し合いで求償金の金額を決められないなど解決できない場合には、相手からあなたの配偶者へ「求償請求訴訟」という裁判を起こされる可能性もあります。
裁判では、特殊事情がない限りあなたの配偶者へ求償金の支払い命令が下るでしょう。
このように、いったん求償権を行使されたら求償金の支払いを免れるのは困難です。
3.離婚するなら求償について考えなくて良い?
求償権を行使されたとき、求償金を払わねばならないのは「あなたの配偶者」であり、あなたご自身ではありません。
そこで不倫によって配偶者と「離婚」するなら求償によって発生するリスクは小さくなります。離婚すれば配偶者とあなたの家計が別になり、配偶者が求償金を払ってもあなたの手元のお金はなくならないからです。
ただし配偶者の手持ち金が減少することにより、財産分与や慰謝料の支払いが困難になる可能性が発生します。
支払いができないわけではなくても相手が慎重になり「支払いを待ってほしい」「求償問題もあるので、君への慰謝料は長期分割にしてほしい」などと言われる可能性もあります。
このようなリスクを考えると、離婚する場合でもやはり求償に対する備えはしておくべきといえます。
4.求償権の時効
求償権にも消滅時効が適用されるので、不倫相手が一定期間行使しなければ時効によって消滅します。
求償権の消滅時効期間は基本的に慰謝料の支払後10年です。
慰謝料の支払いを受けてから相手が10年間配偶者に求償してこなければ、その後求償される可能性はほとんどなくなったと考えましょう。
5.求償権を封じる方法
不倫相手から慰謝料の支払を受けたとき、求償権を行使されない方法はないのでしょうか?
実は、求償権を相手に「放棄」させることが可能です。求償権は権利者である相手が自由に処分できるからです。不倫慰謝料を請求し、金額や支払い方法について取り決めをするときに「求償権を行使しない」と約束させましょう。
求償権を放棄させる際には、必ずその内容を「書面化」すべきです。口頭で「求償権なんて行使しませんよ」と言っていても、後に気が変わって求償する可能性があります。
「慰謝料支払いについての合意書」に、「求償権を行使しない」「求償権を放棄する」などと書き込んで相手に署名押印をさせて、なくさないように10年間、大切に保管し続けましょう。
6.相手が求償について知らない場合は?
求償権は、一般にあまり知られていない法律の専門知識です。不倫相手が求償権についてまったく知らないケースもよくあります。
そのような場合でも、求償権の放棄をさせる必要があるのでしょうか?求償権についての情報を伝えると、相手が「そういうこともできるのか」と気づき、反対に求償権を行使しようと決意してしまうリスクが気になるかもしれません。
ただ慰謝料の支払時に求償について知らなくても、後に求償権について知識を得る可能性が充分にあります。特に今のようにネットに情報があふれている時代では、スマホなどで少し調べたらすぐに「実は求償できる」ことに気づいてしまいます。不倫相手が弁護士に相談に行き「求償しましょう」などと勧められたら多くの人は求償を決意するでしょう。
また求償権の時効は10年と長いので、時効の成立を待つのも非現実的です。
そこで、相手が求償について知らないケースでも念のために放棄させるべきです。
7.求償権を放棄させたいなら弁護士に相談を
不倫相手と交渉するとき、自分で求償権について説明し、放棄させようとしてもなかなかスムーズに進まないものです。相手が「そんな権利があるなら絶対放棄しません」などと言い出す可能性もあります。
そんなとき、弁護士が代理人として交渉をすると、相手を説得して求償権を放棄させられる可能性が高くなりますし、相手も「絶対放棄しない」などと固執しにくくなるものです。
不倫慰謝料請求の交渉は、弁護士に依頼する方が有利です。
当事務所では、これまで不倫慰謝料トラブルの解決に多数関わって参りました。名古屋で不倫慰謝料請求を検討されている方がおられましたら、お気軽にご相談下さい。