不倫の慰謝料請求を受けたとき、必ずしも全額の支払いに応じる必要はありません。多くのケースでは、相手の請求額よりも減額できます。
今回は、請求された不倫慰謝料をどのくらいまで減額できるのか、減額するにはどのようにすればよいのか、名古屋の弁護士が解説していきます。
このページの目次
1.不倫慰謝料の相場の金額までは減額できる
不倫の慰謝料請求を受けたとき、「こんなに高額なお金を払えるはずがない」と感じる方が多数です。「本当にこんなに支払わなければならないのか?」と疑問を感じるケースもあるでしょう。
また「払わないといけないことはわかっているけれど、支払うお金がない」場合もあります。
そんなとき不倫の「慰謝料の相場」までは減額できる可能性が高いので、まずは「慰謝料の相場」について正しく知っておきましょう。
1-1.不倫慰謝料の相場
不倫慰謝料の相場とは、裁判をしたときに裁判所が認定する相場の金額です。法的に相手に認められる請求権は、相場の金額までとなります。それ以上の金額を希望しても、裁判所は支払い命令を下さないからです。
不倫慰謝料の相場の金額は100~300万円程度です。婚姻年数が長くなると慰謝料は高額になり、だいたい10年程度の夫婦の場合で300万円程度になります。
ただし上記は「相手の夫婦関係が破綻したケース」での慰謝料です。夫婦関係が維持された場合には慰謝料が100万円以下になるのが通常です。
また法律上「不貞」というには配偶者と不倫相手との肉体関係が必要です。相手が肉体関係を立証できない場合、慰謝料は0円か、認められたとしても50万円程度までとなります。
もしも相手が上記の相場を超える慰謝料を要求しているなら、少なくとも相場の金額までは減額できます。まずは相手に「相場の金額は〇〇円程度なので、〇〇円までしか支払えません」と返答してみましょう。
1-2.相手が相場への減額に応じない場合
相手に相場の金額を伝えても応じてくれない場合には、相手に裁判を起こさせてもかまいません。裁判をしても相場を超える慰謝料の支払い命令は出ず、相手の希望は通らないからです。
相手が相場を超える高額な慰謝料に固執する場合には「そのような高額な慰謝料の支払は裁判でも認められないので、こだわっても無駄になります。今、相場通りのお金を払うと言っているのだから、応じておいた方が良いと思いますよ」などと説得することで、解決できる可能性が高くなります。
ご本人が相手に上記のような言葉を投げかけても相手はなかなか受け入れにくいでしょう。説得が難しいと感じたら、法律の専門家である弁護士に代理交渉をお任せ下さい。
2.相場以下に減額できるケース
不倫慰謝料の相場は100~300万円ですが、その支払いが難しい方も世の中には多数おられます。そのような場合、相場以下への減額もできる可能性があります。
そもそも慰謝料について話し合いで解決するときには、必ず相場通りにしなければならないわけではありません。両者が納得すれば相場を外れた金額による和解も有効です。あなたがどうしても支払えない状況にあると相手に理解・納得させられれば、相場以下への減額に応じさせることも可能です。
「相手はなぜ相場以下の減額に応じるのか?」と疑問に思うかも知れません。それは、相手の立場に立って考えてみればわかります。
交渉が決裂したら、相手は訴訟を起こして慰謝料を取り立てなければなりません。訴訟や強制執行は自分でするのが難しいので弁護士に依頼せねばならず、高額な弁護士費用が発生しますし、手間や時間もかかります。
それにもかかわらず、不倫相手に支払い能力がなければ、実際に慰謝料を回収するのが難しくなる可能性が高くなります。法律では「ないところからは取れない」制度になっているからです。毎月の給料を少しずつ差し押さえても100万円単位の慰謝料を回収するのに大変な時間がかかりますし、途中で仕事を辞められてしまうおそれもあります。
そのようなリスクを考えるなら、多少金額を落としても裁判前に和解しておく方が、相手にとっても得になるのです。
上記のようなことから、特に「不倫相手に支払い能力がない場合」には大幅な減額に応じてもらいやすくなります。たとえば300万円請求されている場合でも、「100万円の一括払い」で解決できる事例などは珍しくありません。
3.分割払いが認められる可能性について
慰謝料が減額されても手元にまとまったお金がないので、一括払いが難しい方もおられます。その場合、交渉によって分割払いを認めてもらえるケースも多いので、あきらめる必要はありません。
先にも説明したように、相手にしてみれば「資力のない相手方に裁判を起こす」のはリスクが高いので、できれば交渉段階で解決したい思惑があります。
「たとえ分割払いであっても、相手が自発的に支払ってくれるならその方が良い」という判断は充分に働きます。たとえば200万円請求されている事例でも、交渉によって150万円に落としてもらい、毎月5万円ずつの30回払いなどにしてもらえるケースなどがあります。
ご本人が「お金がないので長期分割払いにしてほしい」と申し入れても相手はなかなか受け入れないケースがあります。その場合、弁護士が代理して相手を説得すると、分割払いを受け入れさせやすくなります。
4.不倫慰謝料を減額させる方法
4-1.まずは相手に減額や分割払いを申し入れてみる
不倫慰謝料を減額してほしい場合、まずは自分で相手に精一杯の払える金額を提示し、減額を申し入れましょう。その際「減額要求に応じて裁判せずに早期に示談を成立させるメリット」についても説得的に述べると効果的です。相手が納得すれば減額した内容で和解でき、裁判をされるおそれはなくなります。
4-2.弁護士に代理交渉を依頼する
自分で交渉しても相手が納得しない場合には、弁護士に依頼しましょう。弁護士が説得すれば相手も納得して和解できる可能性が高くなります。
慰謝料を払えない場合、無理に借金などをして支払ってはいけません。話し合いによる減額で穏便に解決するため、お早めに弁護士までご相談下さい。