不倫で慰謝料請求を受けるとき、相手の配偶者から謝罪文を要求されるケースが非常に多いです。
「確かに悪いことをしたかもしれないけれど、謝罪文を無理矢理書かされるのは納得できない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
確かに法律的には「謝罪文を書くべき義務」はないので、断ることも可能です。しかし無碍に「書きません」などと言って断ると相手が感情的になり、トラブルが拡大してしまう可能性もあるので注意が必要です。
今回は不倫して謝罪文を求められたときの賢い対処方法を、名古屋の弁護士が解説いたします。
このページの目次
1.謝罪文の作成義務は無い
不倫していることを相手の配偶者に知られると、慰謝料請求とともに「謝罪文を書いて提出するように」と言われるケースがよくあります。
法律上、謝罪文を作成する義務はあるのでしょうか?
確かに不倫は、法律上許されない行為です。不倫すると「不法行為」が成立して、被害者である相手の配偶者へ慰謝料を払わねばなりません。このように「不倫は悪いこと」であることに間違いはないので、不倫したら「謝罪文」も書かなければならないようにも思えます。相手もそうした意識で当然のように謝罪文を求めてきます。
しかし法律は、不法行為の加害者に「謝罪文を書くべき義務」を定めていません。謝罪するかどうかは本人次第であり、法律や他人が強要することではないからです。裁判でも名誉回復のために謝罪広告が命じられるケースはありますが、被害者を満足させるためだけに謝罪文を書くよう命令される可能性はありません。
謝罪文を書かなかったら相手が怒って裁判をしてくるかも知れませんが、裁判をしても謝罪の強要は不可能です。
2.謝罪文を断ったらどうなるか?
それでは謝罪文の提出を求められたとき「法律的な義務がないので、書けません」と断ったら良いのでしょうか?
現実には、そういうわけにもいきません。
謝罪文を書かなかったら相手が感情的になり、解決できるトラブルも解決できなくなる可能性があるからです。
たとえば相手が慰謝料支払いと謝罪文の提出を求めており「きちんと納得できる内容の謝罪文を書いてくれたら100万円で許してあげる」と言っている場合を考えてみましょう。
「謝罪文は書きません」と言うと「では200万円払ってくれないと和解しません」と言われるかもしれません。また「反省がないから裁判するしかない」と判断されていきなり訴訟を起こされる可能性もあります。
このように、謝罪文を断ることによって不倫トラブルを拡大させる可能性があるので、相手から提出を求められたときには慎重に対応すべきです。
3.謝罪文を書く場合の注意点
では相手の求めに応じて謝罪文を書けば、トラブルを解決できるのでしょうか?
実はそういうわけでもありません。謝罪文を書いても相手が納得するとは限らないからです。たとえばレポート用紙のような紙にパソコンでひと言「すみませんでした」などと書いて提出しても、相手は納得するどころか「ふざけているのではないか?」と思い、より激高するおそれがあります。
自分では必死で書いたつもりでも、相手から見たら「反省がない」「何も分かっていない」などと受け止めてトラブルが拡大してしまうケースが少なくありません。
謝罪文を書いて提出するとしても、内容や作成方法に充分配慮する必要があります。
4.謝罪文を書くべきケースと書くべきでないケース
結局、不倫相手の配偶者から謝罪文を求められたとき、書いた方が良いのか書かない方が良いのかどちらなのでしょうか?
4-1.書かない方が良いケース
基本的には、謝罪文を書く法的義務はないので書く必要はありません。また相手の満足のいくような書き方ができそうにない場合や、文章に自信がない場合にも安易に書かない方が良いです。
4-2.書いた方が良いケース
相手が強く謝罪文を望んでおり「謝罪文を書いた場合には慰謝料を減額して〇〇円にしてあげる」と約束している場合には、慰謝料を減額させるために謝罪文を書きましょう。
ただし謝罪文の提出後に相手の気が変わるといけないので、事前に合意書を作成して以下の内容を明らかにしておくべきです。
- 慰謝料の金額は〇〇とする
- 不倫相手は謝罪文を提出する
- 請求者は謝罪文の内容について苦情を申し立てない
- 不倫相手が謝罪文を提出しない場合にはこの合意は効果を失う
このような約束をして相手に合意書へ署名押印させておけば、相手が謝罪文を見て「このような内容であれば和解しない」と言い出して合意を覆されるリスクを避けられます。
5.謝罪文を求められたとき、弁護士に依頼するメリット
不倫・不貞トラブルで相手の配偶者から謝罪文を求められたら、弁護士に相談すると解決しやすくなります。
5-1.謝罪文を書く法的義務がないことをわからせることができる
法律上謝罪文を書く義務はありませんが、本人が「不倫をしても謝罪文を書く法的義務は無い」と説明しても相手から「開きなおり」と責められる可能性が高くなります。
弁護士が説得すれば相手も受け入れやすくなるものです。
5-2.謝罪文について文句を言わせない
自分一人の判断で作成した謝罪文を提出すると、どうしても相手から「このような内容では納得できない」などと言われるものです。
弁護士がついていれば謝罪文内容についてアドバイスを受けられますし、弁護士が事前に「謝罪文について文句を言われても対処できない、法的な義務も無いのだからこれ以上言われても仕方がない」とクギを刺し、苦情や文句を退けることが可能です。
5-3.慰謝料トラブルについてスピーディに解決できる
謝罪文を求められたとき、無碍に断ってもトラブルになりますが、書いても「気に入らない」と言われてトラブルになる可能性が高く、どちらにしても解決できない可能性があります。
弁護士が代理人となって交通整理すれば、うまく解決に導きスピーディに慰謝料問題を収束させられます。
慰謝料請求の際に謝罪文を求められたとき、自己判断で対応するとトラブルが拡大する可能性が高まります。まずは一度、弁護士までご相談下さい。