- 妻に財産分与をとられたくない
- 父親でも親権を獲得したい
- 高額な婚姻費用を請求されて困っている
- 離婚後も子どもと会いたい
- 年金分割は避けられないのか?
当事務所では、男性側からの離婚相談も数多くお受けしています。
今回は、男性によくある離婚についてのお悩みを元に、弁護士が必要な知識をご紹介していきます。
このページの目次
1.財産分与の分け方について
離婚するとき、共有財産があれば財産分与をしなければなりません。対象になるのは、婚姻中に夫婦が形成した資産や負債です。
たとえば以下のようなものが対象となります。
- 預貯金、現金
- 株式、投資信託
- 車
- 不動産
- 社内積立
- 退職金
- 貴金属、絵画、骨董品、時計などの動産
住宅ローンが残っている場合には、家の査定価値から残ローン額を引いた金額を財産分与対象とします。
財産分与は、基本的に夫婦が2分の1ずつにするものです。古い裁判例では専業主婦の取得割合を減らすものがありますが、今ではそういった考えはとられていません。妻が家事労働をしていた場合、家事労働には外での仕事と同等の価値が認められるからです。
ただし、夫側が特殊な技能や才能、才覚によって通常を大きく超える収入を得ている場合には、夫側の財産分与割合が増やされる可能性があります。たとえば病院経営者の医師と専業主婦の離婚などの場合、妻の取得割合が10%以下になったケースなどもあります。
それ以外のケースでも、話し合いによって合意すれば財産分与の割合を2分の1以外に変更できます。
2.男性が親権を獲得する方法
一般に男性が親権を取得するのは難しいといわれています。確かにその傾向はありますが、最近では裁判所の考え方も少しずつ変わりつつあります。特に子どもが学童期に入ってきたら、男性側に親権が認められる可能性も高くなってきます。
父親が親権を獲得するには、別居時に子どもと離れないことが最重要です。妻が出ていくなら一人で出ていってもらい、自分が家を出るなら必ず子どもを連れて家を出ましょう。
離婚時に子どもと一緒に暮らしていて、子どもが落ち着いて生活できていればそのまま親権を認めてもらえる可能性も高くなります。
ただし子どもが乳幼児の場合には、ほとんどのケースで母親に親権が認められてしまいます。乳幼児の子どもがいてどうしても親権を獲得したいなら、今すぐに離婚するのではなく子どもが大きくなるまで、しばらく時間を置いた方が良いでしょう。
3.婚姻費用について
離婚前に別居すると、妻から「婚姻費用」を請求されるケースが多数です。婚姻費用とは、夫婦が分担すべき生活費です。
夫婦は別居中も互いに扶養義務を負うので、収入の高い方は低い方へと婚姻費用を払わねばなりません。
婚姻費用の金額は、夫婦の収入状況によって決まります。支払う夫の収入が高いほど、また受け取る妻の収入が低いほど高額になります。また離婚するか別居を解消するまで支払い義務が続くので、支払いを終えたければ早期に離婚を成立させるべきです。
急いで離婚するために妥協するのは好ましくありませんが、高額な婚姻費用を払っているなら多少は譲ってでも離婚を成立させた方が結果的に得になるケースもあります。
なお例外的なケースとして、相手が不倫して家を出て行った場合などには、婚姻費用を払う必要はありません。
4.離婚後も子どもと会い続ける「面会交流権」について
男性の中には「離婚後子どもと会わせてもらえなくなるのではないか?」と不安を抱えている方がおられますし、実際に会わせてもらっていないケースも多数です。
しかし親である限り、離婚後も子どもと会い続ける権利が認められます。その権利を「面会交流権」と言います。
面会交流の方法は、離婚時に相手と話し合って取り決めることが可能です。たとえば「月に1度、第2日曜日の午前10時から午後7時まで面会する」などと約束をします。面会条件について合意ができたら、養育費などの他の離婚条件とともに「協議離婚合意書」に明記しましょう。
離婚後に相手が約束を破って会わせてくれなくなった場合や、離婚時に面会交流について取り決めができなかった場合には、家庭裁判所で「面会交流調停」を申し立てましょう。面会交流調停では、調停委員が相手を説得して面会に応じるよう促してくれます。それでも相手が応じない場合、「審判」となって審判官(裁判官)が面会交流の方法を決定してくれます。
なお面会交流権は、直接的に強制執行できない権利です。相手が約束を守らない場合、金銭的な負担を課すことはできても子どもと無理矢理会うことはできません。
「離婚後、子どもと会えない」という状況を作らないためには、まずは離婚時にしっかり話し合って面会についての約束をしておくこと、そして子どもとの良好な関係を築き継続させていくことが大切です。
5.年金分割について
男性の方からは「できれば年金分割に応じたくない」というご相談も多数お受けします。
5-1.年金分割を避けるのは困難
実は年金分割には2種類があります。平成20年4月以降の年金で、妻が専業主婦などの被扶養者(第3号被保険者)の場合には、夫の同意がなくても2分の1の年金分割が認められます(3号分割)。それ以外の場合には、夫の同意がないと年金分割できません(合意分割)。
ただし同意しなかった場合でも、離婚後2年以内であれば、妻は夫に対して年金分割調停を申し立てることができます。そこでは夫が拒絶していても最終的に審判によって2分の1の割合で年金分割が認められてしまいます。以上からすると年金分割を「拒絶する」ことは困難といえます。
5-2.年金を半額とられる制度ではない
年金分割の対象になるのは厚生年金と共済年金で、かつ婚姻中に払い込んだ掛け金のみです。実際に減額される年金の受取金額は、若い夫婦なら月額数千円、熟年の夫婦でも2~3万円程度です。
年金が目減りするのは嫌な気持ちになるものですが、年金を半額とられるものではないので、過剰に心配する必要はありません。
当事務所では男性側からの離婚相談を積極的にお受けしています。名古屋で妻との離婚トラブルでお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談下さい。