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離婚協議書を公正証書で作るべき理由と費用
離婚する場合、夫婦の話し合いでする協議離婚で行うのが一般的です。この時、離婚の合意のみではなく、親権や財産分与、慰謝料や養育費の支払い等についても合意をすることがあります。そのような離婚の際の合意について、書面に残しておくものが離婚協議書となります。離婚協議書は夫婦だけでも作成できますが、公証人の立会いの下で公正証書として残しておくのがベストです。本記事では、公正証書として離婚協議書を作成するメリットと費用について解説します。
1 離婚協議書を公正証書で作ることの重要性
離婚協議書を作る目的は、離婚の際の合意を形に残しておくことで財産分与や養育費の支払いを得やすくすることにあります。このため離婚協議書があればその内容通りの支払いを受けられると思われる方がいますが、実はそうではありません。相手が離婚協議書の合意に従わず、支払いをしないこともあるからです。その場合、支払いを得るためには、相手の給料等の財産を差し押さえる「強制執行」をする必要があります。
ところが、強制執行をするには強制執行によって実現されることが予定される権利の存在、債権者、債務者等を表示した公文書である「債務名義」が必要です。そして、単なる離婚協議書は債務名義には当たらないため、これがあるだけではすぐには強制執行できず、まず裁判をして勝つことで債務名義を手に入れなければならないのです。
一方で、公正証書として作成した離婚協議書は財産分与や慰謝料、養育費の支払いの合意といった「離婚給付契約」に関しては債務名義となります。つまり、離婚協議書を公正証書として作成しておけば、裁判をしなくともすぐに強制執行ができるのです。これが公正証書で離婚協議書を作成しておくことの大きなメリットです。
自分で裁判をするとなると平日の日中に裁判所に出廷しなければならないことがあるうえ、訴状や証拠の作成、裁判所や相手方とのやりとり等膨大な事務作業が必要になります。弁護士に依頼する場合は多くを弁護士に任せることができますが、弁護士費用が生じてしまいます。また、裁判に勝てるとしても決着が着くまでに短くて半年程度、長引くと3年かかることもあります。その間は財産分与や養育費等の支払は受けられません。そうすると離婚後の生活もままならないことになりかねませんから、死活問題です。せっかく離婚したのに相手方と裁判で関係が継続するというのも新生活に水を差すことになります。
このように、離婚協議書は単に夫婦間だけで作成したのでは意味が薄まってしまうのです。
2 離婚協議書を公正証書として作成する費用
では、公正証書を作成するにはどの程度の費用がかかるのでしょうか。
公正証書の作成には、まず、公証人役場に連絡をし、公正証書の案を作成します。そのうえで、合意をする夫婦がそろって公証人役場に行き、公証人の立会いのもと公正証書に署名・捺印をすることで作成することになります。この場合に必要な手数料は以下の表の通りになっています。
目的の価額 |
手数料 |
100万円以下 |
5000円 |
100万円を超え200万円以下 |
7000円 |
200万円を超え500万円以下 |
11000円 |
500万円を超え1000万円以下 |
17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 |
23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 |
29000円 |
5000万円を超え1億円以下 |
43000円 |
(公証人連合会HP: http://www.koshonin.gr.jp/business/b10)
目的の価格は支払いを求める金額の2倍で定まります(公証人手数料令11条1号)。また、養育費については全期間の合計金額の2倍で定まります。ただし、10年を超えた部分については目的の価額に含まれません(12条1項)。また、手数料は費目ごとに発生します。
例えば、養育費月5万円10年以上、財産分与が400万円の合意がある場合、養育費について2万3000円、財産分与について1万1000円で合計3万4000円の手数料が発生します。手数料は支払金額や費目の個数によって変わってきますが、3万円から8万円程度かかることが多いです。
3 まとめ
離婚時には養育費の支払いに合意をしていたとしても、養育費の支払いは10年以上の長期にわたることもあるため、子どもと離れて生活するにつれて支払いをしなくなる可能性があります。裁判をするとなると時間や手間が非常にかかりますし、裁判を弁護士に依頼する場合の費用は数万円程度では収まりません。将来の安心を得るためにも、離婚協議書は可能な限り公正証書として作成するのが理想です。