離婚問題や不倫トラブルには弁護士以外にも行政書士や司法書士が関わるケースがあります。
一般の方は弁護士と行政書士・司法書士の違いをあまり意識していないことが多いのですが実際には大きな違いがあり、相談・依頼するなら弁護士を選ぶ方が有利です。
今回は離婚や男女トラブルを相談するときの弁護士と行政書士や司法書士の違いについて解説します。
このページの目次
1.弁護士、行政書士、司法書士の基本的な違い
まずは弁護士、行政書士、司法書士の基本的な違いを理解しましょう。
1-1.弁護士とは
弁護士はあらゆる法律トラブルを解決できる専門家です。
法的な知識の幅は広く法律書面の作成、法的なアドバイスだけではなく本人の代理人として相手と交渉する権限も持ちます。
また裁判所の種類を問わず裁判代理権が認められます。簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所で本人の代理人として調停に参加したり訴訟を進行させたりできます。
代理交渉や訴訟代理は弁護士の専権であり、他の業種には基本的に認められません。
1-2.行政書士とは
行政書士はもともと「代理で書面作成をする業種」です。役所への申請書類などの行政文書を代書することが多かったのですが最近では行政文書に限らず多種多様な文書を代書しており、不倫の慰謝料請求書や協議離婚書作成なども請け負うケースがあります。
行政書士には本人の代理人として相手と交渉する権限は一切認められません。離婚交渉や調停、訴訟などは行政書士に依頼できないので要注意です。
1-3.司法書士とは
司法書士はもともと不動産などの「登記」の専門家です。不動産の所有権移転や抵当権の設定・抹消登記、会社関係登記などは司法書士の専権事項となっています。
もともとは行政書士と同様、本人の代理人としての交渉や訴訟はできない資格でしたが、平成14年に司法書士法が改正されて、一部の事件について交渉や訴訟を請け負えるようになっています。現在では国の認定を受けた「認定司法書士」に限り「140万円以下の金銭を対象とする事件」について、交渉や訴訟の代理権が認められています。
裁判所でいうと「簡易裁判所での事件」についてのみ司法書士に依頼できます。
以上を前提に、離婚や不倫の慰謝料請求で行政書士、司法書士、弁護士に依頼できることをそれぞれ確認していきましょう。
2.弁護士、司法書士、行政書士それぞれに依頼できる事項の表
離婚や慰謝料トラブルで弁護士・司法書士・行政書士にそれぞれ依頼できる内容を表にまとめたので、確認してみてください。
|
弁護士 |
司法書士 |
行政書士 |
離婚協議書の作成 |
〇 |
〇 |
〇 |
内容証明郵便の作成、発送(本人名) |
〇 |
〇 |
〇 |
内容証明郵便の作成、発送(専門家の名称) |
〇 |
140万円以下の慰謝料請求であれば可(認定司法書士) |
× |
相手との交渉 |
〇 |
140万円以下の慰謝料請求であれば可(認定司法書士) |
× |
離婚調停申立書の作成 |
〇 |
〇 |
〇 |
離婚調停代理 |
〇 |
× |
× |
離婚訴訟代理 |
〇 |
× |
× |
慰謝料請求の交渉代理 |
〇 |
140万円以下の請求額であれば可(認定司法書士) |
× |
不倫慰謝料支払いに関する合意書作成 |
〇 |
〇 |
〇 |
慰謝料請求の訴訟代理 |
〇 |
140万円以下で簡易裁判所における訴訟なら可(認定司法書士) |
× |
弁護士にはどのようなことでも依頼できますが、行政書士に依頼できる事項は極めて少数です。司法書士については「認定司法書士」であれば一部の慰謝料請求の代理が可能ですが、高額な慰謝料請求はできませんし離婚交渉・調停・訴訟にも対応できません。
3.離婚や不倫の慰謝料請求で行政書士にできること
3-1.離婚トラブルについて
- 法的なアドバイス
- 協議離婚書の作成
- 相手に送る内容証明郵便の文書作成、発送
3-2.不倫の慰謝料請求について
- 法的なアドバイス
- 相手に送る内容証明郵便の文書作成、発送
- 慰謝料支払いの合意書作成
離婚でも不倫慰謝料請求でも行政書士に依頼できるのは「請求書の作成と発送まで」で、その後の交渉は、ご本人が進める必要があります。相手ともめたときの調停や訴訟も依頼できません。
すんなり解決できないケースで行政書士に依頼すると、結局は一人で対応する必要があります。
4.離婚や不倫の慰謝料請求で司法書士にできること
4-1.離婚トラブルについて
- 法的なアドバイス
- 協議離婚書の作成
- 相手に送る内容証明郵便の文書作成、発送
- 140万円以下の慰謝料請求や財産分与請求の代理
- 140万円以下の慰謝料請求の訴訟代理
4-2.不倫の慰謝料請求について
- 法的なアドバイス
- 相手に送る内容証明郵便の文書作成・発送(140万円以下なら司法書士名義も可能)
- 不倫慰謝料支払いに関する合意書作成
- 140万円以下の慰謝料請求の交渉
- 140万円以下の慰謝料請求の訴訟代理
離婚の財産分与や慰謝料請求で、当初から140万円以下の請求をするケースは少数です。本来なら300万円請求できる事案でも司法書士に依頼できるのは140万円以下なので、金額を落とさざるを得なくなって不利益を受ける可能性もあります。
また140万円以下の案件について代理できるのは「認定司法書士」のみであり、そうでない司法書士に認められる権限は行政書士と同じです。
5.離婚や不倫の慰謝料請求で弁護士にできること
5-1.離婚について
- 法的なアドバイス
- 離婚協議書の作成
- 内容証明郵便の作成、発送
- 離婚交渉
- 離婚調停、訴訟の代理
- 強制執行の代理
5-2.慰謝料請求について
- 法的なアドバイス
- 内容証明郵便の作成、発送
- 慰謝料請求の交渉
- 慰謝料支払いについての合意書作成
- 慰謝料請求訴訟の代理
- 強制執行
弁護士にはあらゆる事項を依頼でき、相手ともめてしまっても交渉や調停・訴訟の代理を依頼できるので安心です。司法書士のような金額制限もないので、慰謝料や財産分与でめいっぱいの金額を請求できます。親権を獲得する方法や面会交流を実現する方法についてもアドバイスを受け、手続きを依頼できます。
相手が養育費や慰謝料を滞納したときの強制執行(差押え)手続きにも対応できます。
離婚や慰謝料請求トラブルは、行政書士や司法書士に依頼するより弁護士を選んだ方が有利になりやすいでしょう。
名古屋で離婚や男女トラブルにお困りの方は、是非とも一度ご相談下さい。